VAXEE CEO・Xanver氏インタビュー:妥協なき製品開発と“進化し続けるブランド”が見据える未来――「最も大事なのは、ユーザーが安心して長く使えるものを提供すること」

昨年末、当サイトではゲーミングギアなどを中心に展開する「VAXEE」のCEO・Xanver(ザンバー)氏が来日した際に大変ありがたいことにインタビューの機会をいただきました。
先日発表された新型ゲーミングマウス「ZYGEN NP-01S V2」をはじめ、VAXEEが掲げる理念や製品の開発秘話、今後の展望などについて詳細にお話いただきましたので、ぜひ興味のある方は最後まで目を通していただけますと幸いです。
会社の理念とビジョンについて
―― VAXEE設立の背景や目的を教えてください。
Xanver氏:
VAXEEのチームには、私を含め、プロゲーマーとしての経験を持つメンバーが多く在籍しています。これまでに、ゲーミングマウス、マウスパッド、キーボード、ヘッドセット、外付けサウンドカード、モニターなど、さまざまなプロ向けゲーミング製品の開発に携わってきました。また、大会での使用に適したデスクやPCの統合システムの開発も行っています。
これまでの仕事では、消費者と直接やり取りする機会がなかったため、製品の問題をリアルタイムで把握することができませんでした。そこで、VAXEEのECプラットフォームを立ち上げ、消費者と直接つながることで、高品質な製品と優れたカスタマーサービスを提供できる環境を整えました。
品質管理にもこだわり、現在すべての商品に対してVAXEEのスタッフが二重検査を行っています。例えば、マウスの場合、出荷前に検査を実施していますが、一定期間使用した後に電子部品に問題が発生する可能性を完全には排除できません。そのため、購入後のアフターサポートを充実させ、万が一のトラブルにも迅速に対応できる体制を整えています。また、購入前の相談にも対応し、消費者が自分に最適な商品を選べるようサポートしています。
VAXEEの目標は、安心して購入できるECプラットフォームを作ることです。自社開発はもちろん、同じ理念を持つブランドとも協力し、高品質かつ実用的な製品のみを厳選して取り扱い、ユーザー体験の向上を目指していきます。
―― 競争の激しいゲーミングデバイス市場において、VAXEEが目指すビジョンや強みは何でしょうか?
Xanver氏:
私はプロゲーマーとしての経験を持っています。試合中に最も重視していたのは、使用するデバイスの安定性です。少しでも不安定な要素があれば、1ラウンドどころか試合全体を落としかねません。そんな経験を経て、選手からデバイス開発の世界へと進んだ私は、スペックや数値はあくまで参考に過ぎず、本当に重要なのは、ゲーム内での安定性だと強く感じています。
例えば、ワイヤレスマウスの開発において、私たちが最優先したのは「安定して干渉を受けないワイヤレス通信」です。その上で、遅延を可能な限り抑えることに取り組みました。これが逆の順序では意味がありません。どれほど低遅延を実現しても、通信が不安定では競技シーンで信頼できるデバイスとは言えないからです。
そのため、私たちの製品開発には時間がかかります。なぜなら、安定性を確保するために、すべてのテストを段階的に実施しているからです。例えば、ゲーム関連のテストだけでも40以上の項目があり、ファームウェアを一度変更するたびに、すべてのテストをやり直します。また、マウスやマウスパッドは、一つひとつ手作業で検査を行っています。安定性や品質に関わるテストを外部に委託することはなく、自分たちで責任を持って管理しています。安定性や品質を追求するためには、時に効率を犠牲にしなければならないこともあります。それこそがVAXEEの姿勢であり、私たちの強みとも言えるでしょう。
こうしたこだわりを実現するため、私たちは基礎的な技術教育に力を入れ、スタッフの素質や基準にも高い要求を設けています。そのため、VAXEEは大企業にはならないかもしれません。しかし、私たちは着実に進化を続けていきます。そして、私たちのビジョンは、ユーザーの皆さまに「長く安心して使い続けられる製品」を提供することです。
製品開発に関して
―― 現在はマウスとマウスパッドを中心に展開されていますが、今後キーボードやヘッドセットなどの製品展開予定はありますか?
Xanver氏:
キーボードに関しては自社で開発する予定はありませんが、もしパートナーが見つかれば、コラボレーションという形で実施してみたいと考えています。
ヘッドセットは3年ほど前から開発を続けています。デザインは完成していますが、まだ品質的に納得できるレベルに達していないため、リリースしていません。正式に発表する際には、現在の市場にある製品よりも、esportsに適したものをプレイヤーに提供したいと考えています。
―― 今後、新たに展開を予定している製品や注目している技術・素材があれば教えてください。
Xanver氏:
2025年も引き続き、新しい形状のマウスを展開していく予定です。また、ワイヤレス技術に関しては、PixArtと緊密に連携し、より良いユーザー体験を提供できるよう取り組んでいます。
マウスパッドに関しても、新しい表面素材を採用したモデルを複数展開する予定です。これらは従来の布製モデルとは異なり、例えばそのうちの一つは、より素早い初動を実現しつつ、高い防湿性能を備えています。さらに、新しいベース素材の開発にも取り組んでおり、その一例がすでにリリース済みの VAXEE PD です。
VAXEE PDの特徴は、適度な厚みを持ちながら、エッジ部分を丸く処理することで、操作時に手が擦れて不快感を覚えることを防ぎ、より快適な使用感を実現している点です。また、PDシリーズのベース素材は比較的硬めですが、この特性を活かしつつ、より柔らかいタイプの PD-Soft も開発中です。異なる使用感を求めるユーザーのニーズに応えられるよう、選択肢を広げていきます。
―― 製品のデザインを行う際、特にこだわっている点はありますか?
Xanver氏:
先ほど述べた「安定性」に加えて、もう一つ重要なのが「実用性を前提とした心理的な満足感」です。例えば、デバイスが安定していれば、快適な使用感が得られ、それが心理的な満足にもつながります。
私たちは、単に流行を追うために、不必要で負担の大きい機能やデザインを追加することはしません。例えば、これまで一度もゆっくりと光が明滅するLEDライトを搭載したマウスを設計したことはありません。確かに見た目は魅力的ですが、その分マウスの負担が増え、パフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があるからです。
一方で、ゲーム時の性能や使用感に影響を与えない範囲で、異なるカラーバリエーションのマウスやさまざまなデザインのマウスパッドを提供しています。一見すると実用性とは無関係に思えるかもしれませんが、自分の好きな色やデザインを選べることで、心理的な満足感や楽しさを感じてもらえると考えています。
―― NP-01S V2ではセンサー位置が変更されていますが、その理由を教えてください。
Xanver氏:
左右対称マウスの場合、センサーは一般的に中央に配置します。しかし、NP-01S V2はハーフエルゴノミクス形状のため、完全に中央に配置するにはわずかに左寄りにする必要がありました。これによってマウスを左右に振った際、ゲーム内の視点移動と手元の操作がより一致すると考えています。
第1世代のセンサー位置もプロゲーマーから好評でしたが、同じ形状でずっと継続するのは「より良いものを作る」というVAXEEの理念に反し、リスクであると考えました。私たちは常に改良を重ねていきたいので、NP-01S V2においてもセンサー位置の変更を行う決断に至りました。
今後の目標について
―― 獅白ぼたん氏とのコラボレーション製品をリリースされましたが、今後のインフルエンサーやプロゲーマーとのコラボレーション計画はありますか?
Xanver氏:
ホロライブの獅白ぼたん様とのコラボレーションを通じ、多くのポジティブな評価をいただきました。キャラクターデザインの魅力と高品質なプロゲーミングデバイスを融合させることで、多くの方に喜んでもらえたことを嬉しく思っています。
今後も生産数の増加によって品質が低下しない範囲で、同様のコラボレーションを予定しています。詳細が固まり次第、皆様にお伝えできればと思います。
―― ゲーミングデバイス業界の将来のトレンドと、VAXEEが現在挑戦していることを教えてください。
Xanver氏:
まず、「ゲーミングデバイス」と「プロゲーミングデバイス」には若干の違いがあると考えています。プロゲーミングデバイスは、よりシビアに試合中のミスを減らし、プレイヤーのパフォーマンスを最大化することを目指した設計です。
例えば最新技術を使った軽量化が市場のトレンドになっていますが、実際にはプレイヤーの好みによって最適な重さは異なる場合があります。2024年にVALORANTの世界チャンピオンとなった選手にNP-01S V2のサンプルを提供しましたが、長年NP-01Sを使っていた彼にとっては10gの軽量化がフィットせず、より良いパフォーマンスを出すために65gを希望されました。これを受け、私達は彼専用に65gのNP-01S V2を提供しました。
また、同じような事例が私が過去にマウスを開発していた際にもありました。当時はレーザーセンサーが最新技術とされていましたが、センサーの精度が高すぎて汚れに敏感になり、カーソルが飛ぶなど逆に不安定になるケースがあったため、当時は安定性の高い光学センサーを選択しました。今ではレーザーセンサーを見かけることはありません。
この二つの例から、プロゲーミングデバイス業界のトレンドは10年以上大きく変わっていないことがわかります。新しい技術に目を向ける一方で、ユーザーの体験を元に安定した機器を提供することがより重要だと感じています。
VAXEEはECプラットフォームであり、現在の最大の挑戦はお客様に提供する製品の種類が限られていることですが、品質とサービスを維持することに専念し続けます。自社開発製品だけでなく、私たちの理念に合った他のメーカーとの協力も模索して、より良い製品を提供していきたいと思います。
CEO・Xanver氏が明かす創業時の軌跡
―― VAXEEの発展過程で直面した最も困難な挑戦は何でしたか? また、それをどのように克服しましたか?
Xanver氏:
VAXEEを設立した初年度にコロナが発生したことが大きな挑戦でした。工場に行って直接品質検査をすることができなくなり、結果としてすべての製品を台北に送り、品質検査を完了させました。これは効率が悪く、物流コストや資材の面で大きな負担となりましたが、私たちはマウス一つ一つに品質検査を行い、品質基準を守ることにこだわりました。
―― ゲーミングデバイス業界での仕事をしていて、最も達成感を感じた瞬間はいつですか?
Xanver氏:
20代の頃、ヨーロッパのesportsブランドの代理店に入社したばかりの時、プロ選手としての背景はありましたが、ゲーム以外のことは不慣れで、製品開発の経験もありませんでした。毎日の仕事は、異なる素材のマウスパッド表面をテストすることで、私がゲーム内でテストして、合格したマウスパッドの表面素材のみを、欧米のプロプレーヤーに送っていました。当時は開発の方向性を決める権限はなかったのですが、自分が推奨したマウスパッドが最終的に商品化され、プロ選手にも満足して使ってもらえたと知ったときに大きな達成感を得たと記憶しています。
私は、大きな成果よりも小さな成果を見つけることの方が重要だと考えています。小さな成果は大きな成果を築くための養分であり、多年にわたってesportsの仕事に粘り強く取り組む理由の一つです。
―― 個人的に最も気に入っているVAXEE製品はどれですか?
Xanver氏:
ZYGEN NPシリーズ(NP-01、NP-01S)だと思います。これは私自身と様々なユーザーの経験を観察して、左右対称とエルゴノミクスデザインを組み合わせて開発した新しい形状です。私と同じニーズを持つ友人や仲間にも好評です。
ZYGEN NP-01:https://www.vaxee.co/jp/product.php?act=view&id=329
ZYGEN NP-01S V2:https://www.vaxee.co/jp/product.php?act=view&id=396
―― 最後に、日本のファンに伝えたいメッセージがあれば教えてください。
Xanver氏:
VAXEEは設立以来、多くの日本の皆様に支えていただいており、そのご愛顧に深く感謝しています。この点については過去にも皆様にお伝えしてきましたが、もしVAXEEを気に入っていただけたなら、私たちに成長の機会を与えていただければ幸いです。
最近、日本でのサービス対応が十分でなく、多くのお客様からのメッセージを見落とし、迅速に返信できていなかったことを認識しました。この場をお借りして、心よりお詫び申し上げます。
現在、体制の見直しを進めており、これまで対応できていなかったメッセージを一つひとつ確認し、順次対応しております。そのため、近日中に弊社からご連絡を差し上げる場合がございます。
また、製品に関して何かご質問やご不明点がございましたら、どうぞお気軽にお知らせください。すでに人員を増強し、サービスの改善に全力で取り組んでおります。今後、より良い対応ができるよう努めてまいります。また、日本市場向けに、より多くの有名チームやインフルエンサーとのコラボレーションを進め、ユニークな商品を提供する計画もございます。これからもVAXEEを応援してくださる皆様に喜んでいただけるよう、努力してまいります。
また、私たちは日本のesportsの発展にも引き続き注目しています。日本のesportsは他国に比べてやや遅れてスタートしましたが、近年の成長は目覚ましいものがあります。VAXEEも、日本のeスポーツのさらなる発展に貢献できればと願っています。
これまでVAXEEの適切なサービスを受けられなかった皆さまに、改めて心よりお詫び申し上げます。そして、変わらぬご支援をいただいていることに、心から感謝申し上げます。
VAXEE
HP:https://www.vaxee.co/jp/
X:https://x.com/vaxee_Japan
YouTube:https://www.youtube.com/VAXEE
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