SteelSeries Arctis Nova Pro Wirelessをレビュー:従来製品とは一線を画すハイエンド志向ゲーミングヘッドセット
本稿では、SteelSeriesのフラグシップゲーミングヘッドセット「Arctis Nova Pro Wireless」をレビューしていきます。
製品概要 / スペック
デンマークに本拠地を置くゲーミングデバイスブランド「SteelSeries」から2022年9月に発売された、新ラインナップ「Arctis Nova」シリーズの最上位モデル。従来モデルから刷新された40mmドライバーユニットを搭載し、低遅延の2.4GHz/Bluetooth接続、アクティブノイズキャンセリング/外音取り込み機能を搭載。”全能のオーディオ”と謳う、デザインと性能を両立したハイエンドゲーミングヘッドセット。
ドライバー | 40mm ネオディミウムドライバー |
周波数特性(ケーブル) | 10~40,000Hz |
周波数特性(ワイヤレス) | 10~22,000Hz |
感度 | 93dBSPL |
インピーダンス | 38Ω |
バッテリー | 44時間(2.4GHz)× 2個 |
接続方式 | 2.4Ghz / Bluetooth 5.0(同時接続対応)/ 3.5mm有線 |
ワイヤレス範囲 | 12m(2.4GHz) |
マイク | ClearCast Gen 2 – 完全格納式ブーム |
マイク周波数特性 | 100~6500Hz |
マイク感度 | -38dBV/Pa |
マイクインピーダンス | 2200Ω |
本体重量 | 340g(実測値) |
対応プラットフォーム | PC / PS5&PS4 / Nintendo Switch / Mac / モバイル製品 |
開封 / 同梱品
- ヘッドセット本体
- ワイヤレスベースステーション(USB-C接続 x 2、ライン入力 x 1、ライン出力 x 1)
- リチウムイオンバッテリー x 2
- USB-C to USB-Aケーブル(1.5m)x 2
- 3.5mm – 3.5mmオーディオケーブル – 5極 – 4極(1.2m)
- 脱着可能マグネット式イヤープレート x 2
- マイクロフォンポップフィルター
- 取扱説明書
外観をチェック
こちらがArctis Nova Pro Wireless本体。マットな質感のブラックをベースとし、全体的にゲーミング感を排除したスタイリッシュな雰囲気に仕上がっています。SteelSeriesのロゴをあしらったメタリック質感のスピーカープレートがより上質な雰囲気を醸し出しています。
デザインについては、デンマークを代表するデザイナーであるヤコブ・ワグナー氏が監修。高級オーディオブランド「Bang & Olufsen」や近年国内でも人気が高まっている腕時計ブランド「Nordgreen」の製品デザインを手掛けたことでも知られています。Bang & Olufsen社のミニマルかつ洗練されたデザインが本製品にも受け継がれており、所有欲を満たす製品になっています。
イヤーカップ部分のスピーカープレートにはマグネットが内蔵されており、簡単に着脱が可能。
Arctis Nova Pro Wirelessはバッテリーが交換式タイプになっており、プレートを取り外すとバッテリーの収納スペースが現れます。
外出時の充電やファームウェアのアップデートの際に使用するUSB Type-Cポートもこちらに設置されています。
左のイヤーカップには音量調整ダイヤル、ミュート切替スイッチ、電源ボタン、完全格納マイク、LEDインジケーターを搭載。音量調整ダイヤルはノッチ感があるタイプで操作感は良好。ボタン周りは黒で統一されており、とてもミニマルな印象を受けます。
右のイヤーカップにはBluetoothの接続ボタンと接続状態を示すLEDインジケーターが搭載されています。
イヤーパッドの素材はヴィーガンレザー(合成皮革)で、サラっとしつつもしっとりとした上質な肌触り。中にはメモリーフォームのスポンジが入っており、ほどよい厚みとクッション性があります。
イヤーパッドは着脱可能なタイプ。イヤーカップの切り欠き部分から引っ張ることで取り外すことができます。着脱時に少々力が要りますが、経年劣化しやすいイヤーパッドを簡単に取り外せるのは嬉しいポイントです。
Arctis Nova Pro Wirelessは40mmのドライバーユニットを搭載。ハウジングの中央部にはアクティブノイズキャンセリング用のマイクが備わっており、やや出っ張った形状となっています。
ヘッドバンド部分は耐久性のあるスチールバンド。マット加工が施されており、質感は高めです。
ナイロン製のスキーゴーグルヘッドバンド。2箇所での位置調整が可能な上に伸縮性もあるため、高いフィット感が得られます。
音質 / 定位感
音質については、全体的にフラットな音質で低音から高音までバランスよく鳴らしてくれる印象です。低音と高音が強調されるいわゆる「ドンシャリ」タイプではなく、中音域も非常に粒立ちの良い音質。全体的に解像度がかなり高く、それぞれの音がしっかりと分離して聴こえます。
手持ちの「Razer BlackShark V2 Pro」との比較では、BlackSharkはドンシャリ気味でやや音がこもって聴こえます。聴き疲れしにくいサウンドではあると思いますが、あくまでもゲーム向きで音楽鑑賞向きではないといった印象を受けます。
一方のArctis Nova Pro Wirelessは音の解像感に優れており、それぞれの楽器の音色も綺麗に分離して聴こえます。十分に音楽鑑賞にも利用できるレベルで、ゲーミングヘッドセットとしては非常に素晴らしい音質であると言えます。
Arctis Nova Pro Wirelessは、定位感についても非常に優秀です。また音の解像度が高いため、地面の材質による足音の違いなども明瞭に識別できます。
装着感
Arctis Nova Pro Wirelessの装着感については、フィット感がとても良く密閉感が強め。合成皮革のイヤーパッドも程よくクッション性があり、ヘッドバンドも伸縮性があるタイプなので長時間の使用による頭頂部の痛みも感じにくいです。ただ、密閉型なので蒸れはどうしても気になります。
側圧に関しては個人的には若干強めかなといった印象。ただし、使い込んでいくと徐々に自分の頭の形に馴染んでくる感覚があり、筆者の場合は数日で側圧が気になることはなくなりました。もしどうしても気になる場合は、何かに挟んでおいて側圧を緩めるといった方法もあります。
重量は実測値で340g。ヘッドセットにしてはやや重めの重量感ですが、フィット感がかなり良いので装着時に重たいと感じることはあまりないです。
長さ調節は無段階のスライダーで3cm弱程度の幅を調整可能。スライダーは適度な硬さになっており、自身のベストポジションで維持しておくことができます。
マイク
Arctis Nova Pro Wirelessのマイクは、双方向ブームマイクが搭載されています。イヤーカップ部分に完全に格納することができるため、使用しない場合でも邪魔にならず使い勝手はかなり良好です。ミュート時にはマイク先端のLEDインジケーターがオレンジ色に光るため、装着時でもマイクのオン/オフ状態が簡単に把握できます。
マイクの長さは最大9cmほどで、ちょうど口の端にマイクが来るような形になります。また、マイクケーブルにワイヤーが入っているため、好みの位置に調整することが可能です。
マイク音質については、ゲインが高めで明るく聞き取りやすい音質です。特に音が籠もっている感じもなく、ゲーミングヘッドセットとしては良い方だと思います。ボイスチャット等では問題なく使用できるレベルだと思います。
マイクに関する様々な設定は、オーディオソフトウェア「SteelSeries Sonar」で設定可能です。Sonarでは、AIによるノイズキャンセリング機能やイコライザーでの音質調整などができます。
以下の音声は、暖房ヒーターを付けた上でキーボードのタイピング音を収録した比較音声。ノイズキャンセリングOFF、50、100の順で比較を行いました。環境音に関しては50の段階でほとんど除去されており、タイピング音は50でやや低減、100でかなり低減されています。綺麗に環境音ノイズを消してくれるので、実用性はかなり高い機能だと思います。
ノイズキャンセリング機能 / 外音取り込み機能
Arctis Nova Pro Wirelessにはアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)と外音取り込み機能が搭載されており、本体に計4つの集音マイクを搭載したハイブリッドシステムが採用されています。使用方法は、電源ONの状態から電源ボタンを1タップでノイズキャンセリング、2タップで外音取り込み状態となります。
ノイズキャンセリングについてはそこまで強力ではないものの、PCファンやエアコンといった環境音ノイズは気にならないレベルにまで除去してくれます。AirPods ProやSONY WH-1000Xなどの強力なANCが搭載されている機種と比べると性能は劣りますが、使用時の違和感もなくゲームやコンテンツへの没入感が増すので、非常に便利な機能です。
外音取り込み機能についてはかなり自然な印象です。本製品を装着した状態でテレビを鑑賞することも可能なレベルで、人との会話も問題なく行えます。
VC時に自分の声が強調されて聞こえるのが嫌な方や宅配便待ちなどの際にも便利な機能ですが、外音取り込みをオンにすると「サーッ」という音が微かに聴こえる点は注意。ただ気にならないレベルではあるので、使用上の問題は特に感じられません。
ベースステーション / バッテリー
Arctis Nova Pro Wirelessには、PCやPS5、Switchなどのゲーム機とヘッドセット本体を中継する専用ベースステーションが同梱されています。
本体ディスプレイには電池残量やボリュームなど、様々な情報が表示されるほか、ベースステーション本体からイコライザー調整やノイズキャンセリングのオン/オフ、接続先の切替など様々な設定ができます(ソフトウェア上でも設定可能)。
また、ベースステーションはArctis Nova Pro Wirelessの充電ステーションとしても利用可能。2つのバッテリーが同梱されているため、一つはヘッドセット本体に装着し、もう一つは予備用としてベースステーションで常に充電しておくことが可能です。このシステムがとにかく便利で、ワイヤレス製品の欠点を見事に解決しています。また、スペック上ではバッテリー1本あたりの連続再生時間は最長約44時間(2.4GHz接続時)となっています。
さらにArctis Nova Pro Wirelessでは「Infinity Power System」と呼ばれるシステムを搭載。8秒以内にバッテリーを換装することにより、自動的に電源復帰&ワイヤレス接続を行ってくれるという機能です。バッテリー交換後に手動で起動する必要がないので地味ですが重宝する機能です。
接続方法 / 遅延
Arctis Nova Pro Wirelessの接続方法は、低遅延の2.4GHz/Bluetoothの2方式の無線接続に対応。3.5mmオーディオケーブルが同梱されており、もちろん有線接続(有線接続時には自動で電源オフ)もできます。さらに同時接続機能「Quantum 2.0 Wireless」を搭載しており、2.4GHz接続でPCの音とBluetooth接続でスマホからの音を同時に聞くことが可能です。
遅延については2.4GHz接続時には一切感じられず、有線接続と同等レベル。FPSや音ゲーでも違和感なく使用可能です。
接続も非常に安定しており、2.4GHz接続時には接続元であるベースステーションから壁を何枚か挟んで距離を取っても途切れることなく使用できました。よほど離れない限りは安定した接続を維持してくれます。
ソフトウェア
SteelSeries GG:Engine
Arctis Nova Pro Wireless本体の設定は、SteelSeriesが開発した統合ソフトウェア「SteelSeries GG」に同梱されている「Engine」という項目から設定可能です。
アプリ左側のタブから「Engine」→「機材」と進み、該当のデバイスを選択すると設定画面が開きます。
Engineの設定画面では、イコライザーやマイク音量の調整、さらにベースステーションに関する各種設定を行うことができます。
基本的にこちらの設定はベースステーション本体でも行うことが可能ですが、ソフトウェア上で行う方が便利です。
SteelSeries GG:Sonar
先ほどのEngineと同じくSteelSeries GGに同梱されている「Sonar」は、同社が開発するPC用オーディオソフトウェア。このソフトが実はかなり優秀で、ゲーング初を謳うプログレードのパラメトリックEQをはじめ、それぞれ独立したオーディオミキサー機能を搭載しています。
Sonarにはゲーミング、チャット、MEDIA、マイクの4種類の仮想オーディオの入出力ソースが用意されており、各項目ごとにボリュームやイコライザーの調整が可能な上、複数のプラットフォームでそれぞれを独立したデバイスとして設定可能。例えばDiscordでは「チャット」を、ゲームでは「ゲーミング」を接続し、それぞれ個別にイコライザーの設定やボリューム調整などを行うといったことも可能です。
さらに、SonarではEngineよりも細かなイコライザー調整ができるほか、Apex LegendsやOverwatch 2など各種ゲームに最適化されたEQプリセットが数多く用意されています。
もちろんVALORANTにも対応しており、VALORANTの海外プロであるbabybay選手がチューニングした専用プリセットが用意されています。SteelSeries公式サイトによると、VALORANT用のプリセットは足音がより強調され、スパイクの効果音や定位感がより向上するとしています。その他にも、没入感のあるサラウンド音声を再現する「360 Spatial Audio」なども搭載しています。
総評:デザイン、音質、性能が見事に調和したハイエンドヘッドセット
「Arctis Nova Pro Wireless」は、音質の良さ、抜群のフィット感というヘッドホンとしての基本的な性能に加え、ソフトウェア面においても非常に優れている製品であると感じます。またデザイン性もよく、Bang & Olufsen社の製品を手掛けたことでも知られるヤコブ・ワグナー氏が監修していることから、他社の追随を許さないミニマルで上質なデザインに仕上がっています。
機能面ではANC機能や外音取り込み機能を搭載し、接続方式には低遅延の2.4GHz/Bluetoothの2方式に対応。さらに同時接続機能「Quantum 2.0 Wireless」を搭載しており、2.4GHz接続でPCの音とBluetooth接続でスマホからの音を同時に聞くこともできます。オーディオソフトウェア「SteelSeries Sonar」との相性もよく、ゲームから音楽鑑賞まで一台で幅広くこなすことが可能です。
また、ベースステーションでのバッテリー充電機能は非常に秀逸。ワイヤレス製品ではどうしても使用中のバッテリー切れがストレスになってくるので、予備のバッテリーを常に充電しサッと取り替えられるアイデアは革新的。個人的にはこのためだけに購入を検討してもいいほど便利な機能だと思います。
ヘッドバンドとスピーカープレートは4色のカラー展開でセット販売されており、好みに合わせてカスタマイズすることが可能。さらにイヤーパッド、バッテリーについても単体でも販売されており、本体が壊れない限りは長期間使用することができそうです。
デザイン、音質、フィット感、機能面、専用のベースステーションまで付属しており、欠点らしい欠点は特に見当たりません。5万円という価格は簡単に手が出せるものではないですが、価格相当もしくはそれ以上の価値があると感じます。ゲームだけでなく普段使いもできるヘッドセットをお探しの方にはぜひ一度試してほしい製品です。
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- ゲーミングデバイスらしからぬ、B&Oブランドを彷彿とさせるような高級感あるデザイン
- 解像感の高い音質で音楽鑑賞にも◎、定位感も良好
- 抜群のフィット感で遮音性が高め
- ANC機能/外音取り込み機能が便利
- ベースステーションで予備バッテリーの充電ができる
- 低遅延で接続先の切替もシームレス
- マイク音質はゲインが高めで聞き取りやすい音質、完全格納式で邪魔にならない
- ヘッドバンド、イヤーパッドが着脱可能(別カラーも個別販売)
- イヤーパッド、バッテリーが単体販売しており、劣化した際に交換可能
- オーディオソフトウェア「Sonar」がとにかく優秀
- 価格が高価
- 側圧が若干強め
関連リンク:SteelSeries 製品ページ
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