インタビュー

SCARZ元コーチのFadezisが日本シーンの特徴と問題点を語る「VCJは他のどのTier2よりも環境が優れており、まるでTier1のようだ。しかし、その快適さが選手の競争意識を弱めている」

2025.05.31 148 COMMENTS
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2023年から24年にかけて「SCARZ」のヘッドコーチを務めたFadezis氏が「VALO2ASIA」のインタビューに応じ、日本シーンの特徴や問題点について語っています。興味深い内容となっていましたので、一部を翻訳しました。

Fadezis:日本シーンは、他のどのTier2サーキットよりも優れた環境です。多くの視聴者、ファン、チーム、資金、素晴らしい運営、そして大規模なオフライン。VCJにいるだけで、まるでTier1環境にいるように感じられます。

ー 他の多くの面で優れているように見える日本シーンは、なぜ国際的な舞台で結果が出ないのでしょうか?

Fadezis:新しいFPSシーンに参戦する多くの組織が、給料が支払われるプロになるための基準を下げています。レディアントというだけで、時にはそうでない場合でも、契約を得るには十分なんです。シーンが選手で飽和しておらず、プロチームでのポジション争いが少なくなっています。「まあまあ」な選手でも各チームの奪い合いとなり、優秀な選手には長期契約や大型契約が提示され、ほとんどスーパースターのような扱いを受けています。

遅刻したり、寝不足のまま練習に出たり、ルーティーンをサボったり、練習中にコミュニケーションを取らなかったり、定点を忘れたり、ただ指示されるがままにスクリムをこなす選手もいます。彼らは具体的に頼まれたことだけをこなし、特別なことは何もせず、ただ給料を受け取るために働くだけで、主体性も野心も感情もありません。

優秀な選手に対する需要が高く、視聴者の世論が大きなウェイトを占めているため、チームは適切な罰金や処罰を与えることができないのだと思います。もしそれを試みれば、選手はそういうことをしなくてもお金を払ってくれる別のチームに移籍してしまうかもしれないので、多少のプロ意識の低さには目をつぶってしまいます。そうでなければ、その組織は悪い印象を与えてしまう可能性があるからです。

ー 状況を好転させるために、どのようなマインドセットが必要でしょうか?

Fadezis:競争というものは常に、純粋な情熱と、恵まれた環境でなくても自らが優れていることを証明したいという思いから始まってきました。そうして初めてシーンは成長し、選手たちは給料を貰い、より高い報酬を得るようになります。そこには「もっとゲームに時間をかけて、仕事と両立させなくてもいいのなら、一番になれるのに」という思いがあるでしょう。それが自然な発展の仕方です。

しかし日本シーンはそうした段階をスキップしてしまったからこそ、問題が起きていると私は感じています。自然な流れでは、最も優秀で才能のある選手たちが一緒にチームを作ります。トッププレイヤー同士がプレイしたがることで、チームに活気が生まれるんです。才能のある人たちは、他の才能のある人たち、尊敬できる人たちと一緒に仕事をしたがります。彼らは心の底から、最高であることを渇望しているんです。

他の誰もがそのチームに入ることを夢見ることで、常に向上し続け、全力を尽くさなければならないというプレッシャーが生まれます。なぜなら、そのポジションを得るために、同じ条件下でより多くをささげる準備ができているハングリーな選手が常にいるからです。

ー ZETAとCRを除けば、NORTHEPTIONのようなほんの一握りのチームしか国際大会を突破できておらず、非常にまれなケースです。日本の草の根のシーンにおける育成方法には、選手本人の他にも根本的な問題やギャップがあるのでしょうか?

Fadezis:日本では、どんな動きもできないように感じます。Tier2での実際の実力に関わらず、多くの選手が長期契約や大型契約に縛られているからです。契約書をまともに読まない選手もいるし、彼らを代表する代理人やエージェンシーもおらず、移籍金は非常に高額です。場合によっては、オーナー自らが移籍を阻止することもできます。契約において、「脱退後は2年間VCJに出場できない」と記載されたケースもあり、それは実際に起こりました。過去3年間、シーズン中にTier2からTier1への移籍が無かったのはそのためです。

そのうえ、日本のファンはシーズン途中の変更を嫌う傾向にあります。ただ実際には、選手の性格や仕事ぶりを本当に理解するには、時間のほかにプレッシャーが必要なんです。ポジションを失う恐怖がなければ、居心地が良すぎて自分を追い込むことをやめてしまう選手もいます。またファンは非常に協力的で、チームに結果を求めることはほとんどないため、変化や改善への動機はさらに少なくなります。

VCJではすべてが心地よく感じられるので、人々はそこにいるだけで満足してしまうのです。観客でさえ圧倒的に応援してくれるので、負けてもいいと思ってしまうほどです。一番になる必要は無く、それとは関係なしに給料を貰い、愛され、応援される、そんな感じです。

選手は評価と、自らの価値を証明することに飢えているはずです。しかしその代わりに、それに見合うほどの結果を得ることなく、既に満足してしまっている選手もいます。他の地域では、選手たちは夢を追いかけるために本当の意味での犠牲を強いられます。彼らは母国を離れ、わずかな給料で試合に出場し、過酷な条件の中で、情熱と自分自身を証明したいという欲求に突き動かされています。そうして初めて、彼らはより良い条件や待遇を手にすることができるのです。

ー 他の地域と比べてどうでしょうか?

Fadezis:日本の隣、韓国を見てみましょう。視聴者が少なく、まともな年俸を提示できる組織が少ないにもかかわらず、はるかに厳しい競争が繰り広げられています。契約期間はそれほど長くはなく、プロ意識に欠ける行為をした選手は実際に交代させられます。この地域には激しい競争があるものの、選手たちはプレイしたがっており、給料や勝利を求めて海外へ移住したり、新しい言語を学んだり、自分を追い込む準備ができています。韓国のプレイヤーがNA、日本、中国、インド、東南アジアで戦っているのは知っているでしょう。

日本は最初から快適すぎたんだと思います。選手たちは不快感と向き合い、人格を形成し、勝利のためにどこまでやれるか、最高のレベルでプレーし、その技術に見合った報酬を得るために、真に試されるといったことを経験してきませんでした。日本で急速に形成された、信じられないほど協力的で快適な環境は、諸刃の剣なんです。

いずれバブルがはじけたとき、より高い基準を自らに課し、勝利のために本気で行動し、自分の仕事を全うすることで報酬を得ようとする選手だけが残り、あるいはトップに上り詰めることがあるかもしれません。

しかしこのシーンが主にエンターテインメントとして扱われ、プロ意識が見失われるようなことがあれば、つまり選手たちの弱さが派手な海外選手で覆い隠されるようであれば、よりハングリーな外国人選手が入ってきて、素晴らしい環境をフルに活用し、成長するリーグであり続けるでしょう。

ー 確かに、「成功しているがゆえの苦しみ」のように思えます。しかし例えば、ベテランや国際大会の経験を持つ選手、そして競技者としてのDNAを持つ選手を獲得することが、事態の収拾に役立つと思いますか?それとも他の要因もあるのでしょうか?

Fadezis:多くの選手が競技シーンに見切りをつけて引退し、彼らの代わりとなるような優秀な新人もあまり入ってきていません。正直、そうなるのは分かります。これだけ視聴者が多ければ配信でお金を稼ぐのも容易ですし、みんな競技のストレスに追われることなく自分の生活を送ることを望むでしょう。

しかしシーンが真に成長するためには、経験豊富な人々が次世代をリードし、チームを導き、経験を共有し、選手がプレッシャーに対処できるよう手助けする必要があります。ゲームを深く理解し、全員に責任感を持たせる方法を知っている、ビジョンを持ったIGLやコーチが必要なんです。その責任を引き受けること、他人を鼓舞すること、プロであることの本当の意味を定義するコーチであることは容易ではありません。

コーチは自分が学んだことを伝えるべきです。自分がもっとうまくやれたことは何か、自分が犯した過ちは何か、次の世代が同じ落とし穴にはまらないようにするにはどうすればいいか。しかしもっと簡単で、しばしばもっと儲かる配信という道があるなかで、多くの人がその道に進もうとは考えないのは当然です。

実際のところ現在のコーチの多くは、選手としてのキャリアに満足できなかった、または引退してフルで配信をする選択肢がなかった元選手です。彼らが持っているのは知識と経験であり、それをシーンを支えるために使っている。それは重要で、本当の意味での永続的な成長を望むのであれば、まだまだ必要なことなんです。


Tier2シーンの難しさから多くのチームが撤退し、選手のポジション争いは過去に比べれば激しくなっていそうですが、日本シーンでヘッドコーチを2年務めただけに、なかなか表には出てこない内情が明らかになっています。ファンの姿勢に対する意見など、耳の痛い話も率直に話している印象です。

Fadezis氏は現在オセアニアの「E-KING」でヘッドコーチを務め、先日行われたSplit1では無敗の11連勝でチームを優勝に導きました。同氏がコーチになるまでの過程、コーチに求められることなどを記した後編は後日公開されるとのことです。

関連リンク:ex-SCARZ coach Fadezis opens up problems about Challengers JP: “Japan is way too comfortable from the start.

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6月13日 更新
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